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以前、漢方薬の八味丸(八味地黄丸、腎気丸ともいう)がブームになったことがありました。糖尿病にいい、眼にいい、夜間尿、下肢の冷え、膀胱炎にいい……。どんな病気も、これさえあればという雰囲気でした。
八味丸は確かに適応範囲の広い薬ですが、西洋医学とものさしが違うとはいえ、効果のある範囲があります。老人性の病気ならば、なんでもいいというわけではありません。
八味丸は腎虚の薬です。漢方でいう腎は、腎臓そのものではなく、下腹部全体、骨盤内を指すと考えられます。ここに気(エネルギー)が納められており、腎が弱れば、生命力、体力も低下すると考えられます。腎虚の薬とは、体力が低下し、下肢の脱力感、痛み、しびれなどがあり、夜間尿、口の渇きなどがある状態。ここから、前述の各種の病気にも効果があることになります。
投与する大きな目標に「齊下不仁=さいかふじん」があります。下腹部に力がなく、自分のものでないような状態。この状態でない人にはあまり効果はありません。
ところで不仁とは、一体感がなく、自分の体でも、自分の体と感じられない状態。仁はその逆。医は仁術というと、人をいつくしむことと考えられてますが、漢方的には、患者の痛みを自分の痛みとし、患者と一体になることだと考えられます。 |